高齢者の貧血を予防する食生活とは?食事の違いから分析した結果。 | ヘルスケア110番~予防医学の専門家が教える健康管理プロジェクト

高齢者の貧血を予防する食生活とは?食事の違いから分析した結果。

貧血

日本は「貧血大国」とも言われるほど、貧血に悩まされている方がとても多いです。

特にダイエット中の女性や妊娠中の方など、貧血に悩む方は多くいらっしゃいます。

高齢者にとっても、貧血はよく見受けられる問題のひとつで、医療や介護の現場では重要な疾患と言えるでしょう。

私も病院や福祉施設の管理栄養士として働いていた時、高齢者の貧血が多いことを実感していました。

高齢者の貧血は、体調不良や活動量の低下、ひいては身体全体の機能の低下の原因となりえるため、日ごろから注意が必要です。

貧血の原因にはいろいろありますが、その中のひとつに食生活が挙げられます。

今回は、高齢者の貧血と食生活について説明します。

貧血とは?

まずは「貧血」とはどのような状態かを説明します。

貧血とは、血液中の「赤血球」や「ヘモグロビン(色素)」が少なくなってしまっている状態のことです。

血液中の「赤血球」は、細胞に酸素を運ぶ役割を持っており、赤血球の中にある「ヘモグロビン」が酸素と結合しています。

酸素の運搬役の赤血球と、台車の役割をするヘモグロビンが足りなくなり、酸素が十分に運べなくなっている状態が貧血、というわけですね。

主な症状は、動悸、息切れ、食欲不振、疲れやすい、倦怠感などの目立ちにくいものが多いです。

高齢者の場合は「立ちくらみ(起立性低血圧)」にも注意しましょう。

名前に低血圧とある通り、基本的には血圧に関わる症状ではありますが、貧血によっても立ちくらみをしやすくなります。

転倒の原因にもなりますので、予防が大切ですね。

ちなみに貧血と言えばめまいでクラクラ……というイメージがありますが、急激に出血をしない限り、貧血を直接原因とするめまいは、実はあまり起きない症状です。

症状が目立たないので、特に高齢者の場合は、血液検査をするまで判明にくいのも貧血の特徴。

しかし「なんとなく調子が悪い」という状態は、日常生活においても重荷になるものです。

貧血の主な原因

貧血の女性

貧血でよく見られるのが、鉄欠乏性貧血です。

その原因は、読んで字のごとく「鉄」の不足。

食事から十分な鉄分が摂れていないと、貧血を引き起こしやすいことは良く知られていますよね。

また、月経などによる出血を原因とする貧血や、激しい運動の刺激によって赤血球が壊れて引き起こされる貧血もあります。

鉄欠乏性貧血を予防する食事と言えば、レバーやほうれん草などが有名ですね。

重度の貧血の場合、病院では鉄剤を処方されることがあります。

しかし大切なのは、鉄だけではなく、タンパク質やビタミンなど、血液を作るために必要な栄養素を食事からバランスよく摂ることです。

高齢者の貧血

高齢者の場合、年齢が高くなるほど貧血のリスクは高まると報告されています。

過去に国民栄養調査(今は国民健康・栄養調査と呼ばれています)のデータを用いた研究では、70歳以上の女性における貧血者の割合は25%以上という報告もあるのです。

高齢者の貧血は、死亡リスクが健常な高齢者よりも高いほか、骨折や認知機能の低下の危険性も高いと言われます。

そのため、健康を維持していくためにも、貧血の予防や改善はとても大切です。

若年者にはあまり見られないパターンとして、鉄を十分に摂取しているにもかかわらず、それをうまく血液にできないということもあります。

高齢者によく見られる貧血の原因には、以下のようなものがあります。

鉄欠乏性貧血

こちらは年齢を問わずよく見られる貧血です。

しかし高齢者の場合、食事の内容に問題があったり、食事量が減ったりすることで栄養状態が悪化し、鉄不足になることがありますので注意しましょう。

特に食事を抜いてしまうと、エネルギー不足で活動量が低下し、活動しないことで食欲が低下し、さらに食事量が減るという悪循環を引き起こします。

また、悪性腫瘍などによる持続的な出血によって、鉄欠乏性貧血が起きることもあります。

特に高齢者の場合には、胃がんや大腸がんなどを発症したり、腰痛などに処方される鎮痛剤の内服によって胃が荒れて出血したりすることもありますので、こちらも要注意です。

慢性炎症性疾患による貧血

十分に鉄を補給しても、血液を作る機能に問題が起きると、うまく血液を作ることができず、貧血になることがあります。

高齢者の場合には、悪性腫瘍や感染症、膠原病(こうげんびょう。関節リウマチなど)を原因とした貧血が多いです。

こういった場合は、原因となった病気の治療によって回復します。

骨髄性疾患

血液を作る機能がある「骨髄」の病気があると、血液がうまく作れません。

代表的なものには「骨髄異形成症候群」や「再生不良性貧血」などがあります。

骨髄異形成症候群は高齢者に多く見られる骨髄の病気で、その名の通り血液の細胞を作る骨髄に異常がおき、貧血を引き起こします。

再生不良性貧血は、薬や放射線治療の副作用として起きることがあり、こちらも骨髄で血液作れない状態です。

老人性貧血

そのほか、原因がはっきりしない場合には、加齢の影響が考えられます。

血液を作る機能が低下したり、ホルモンバランスの悪化で赤血球がうまく働かなくなったりすることなどが原因で、貧血を引き起こしているというわけです。

国民健康・栄養調査の分析

牛肉

高齢者の貧血には様々な原因がありますが、まずは日々の食事でしっかりと栄養を摂ることが大切。

鉄欠乏性貧血の場合は特に食事が重要ですが、そのほかの原因があった場合でも、栄養状態が悪いとやはり改善しにくいものです。

厚生労働省がまとめている「国民健康・栄養調査」のデータをもとにして、高齢者の食事と貧血との関係について調べた研究がありますので、紹介します。

研究と分析の方法

  • 平成15~21年(2003~09年)の「国民健康・栄養調査」のデータより、65歳以上の高齢者17,589名を抜粋します。
  • そのうち「栄養摂取状況」「身長」「体重」「血液検査値」「生活習慣調査」のデータがそろっている10,606名のデータを分析しました。
  • なお、貧血の定義は、WHOの基準を用いました。(男性:ヘモグロビン値13g/デシリットル未満。女性:12g/デシリットル未満)

分析の結果

このデータの分析によって、大きく分けて4つのことが分かりました。

  1. 食事内容を分析すると、貧血の男性・女性に共通して「野菜類」「魚介類」「肉類」「油脂類」などの摂取量が少なく、エネルギー(カロリー)の摂取量も少ない。
  2. 貧血の高齢者と、そうでない高齢者を比較した場合、貧血の高齢者は年齢が高く、運動量(1日当たりの歩数)が少なく、身長に対する体重も低い。
  3. 2003年における貧血の高齢者の割合は、男性で23.8%、女性で25.8%でしたが、2009年にはそれぞれ19.3%、21.7%と減少しています。
  4. 2003年から2009年までの食事の変化を分析したところ「穀類」が減少し、「野菜類」「肉類」摂取量が増加していました。

【出典】瀧本秀美(2017)国民健康・栄養調査における高齢者の貧血の改善傾向(2017.7 健康・栄養ニュース 第58号掲載)

まず、貧血の方は「野菜類」「魚介類」「肉類」の摂取量が少ないという結果から、ビタミン、タンパク質、そして鉄などの栄養が不足していることが予想されます。

しかし、2003年から2009年にかけて食事の内容が変化し、「野菜類」や「肉類」の摂取量が増えたことで、不足していた栄養がきちんと摂取できる食事になりました。

これらの結果から、ごはんなどの「穀類」が減り、おかずである「野菜類」や「肉類」が増えたことが、高齢者の栄養状態を改善し、貧血の予防に役立っていると予想されます。

食生活の変化が、貧血の発症に影響していると考えられますね。

やはり、毎日の食事が大切ということです。

では、実際にどのような食事が貧血予防に有効なのでしょうか。

貧血を改善する食事~管理栄養士のアドバイス~

バランスのよい食生活を

貧血予防と言えば「レバーをいっぱい食べなきゃダメ?」と思いがちですが、そんなことはありません。

もちろんレバーも美味しくいただきたいですが、食事に一番大切なのは、バランスです。

鉄分だけを摂っても、ビタミンやタンパク質などの栄養が足りなければ、貧血を予防することはできませんからね。

高齢者の貧血を予防するためのポイント

高齢者の貧血を予防するためのポイントは、以下の3つです。

  • 一日三食、規則正しく食事を食べる
  • 主食と主菜と副菜を組み合わせたバランスの良い食事を心がける
  • 特にタンパク質を含んだ主菜はしっかり摂取する

食事を抜いてしまうと、エネルギーの不足から活動量が減り、食欲が落ちるという悪循環を招きかねません。

レバーや牛肉、赤身の魚に豊富な鉄分はもちろん大切ですが、野菜のビタミンなども大切な栄養素です。

鉄分だけでなく、タンパク質のもとにもなる肉や魚は、貧血を予防するために大切な食材です。

ごはん、パン、めんなどの主食に加えて、肉や魚などの主菜、野菜の副菜を組み合わせた、バランスの良い食事を心がけましょう。

特に、ごはんが多めで肉や魚が少ない食事には注意が必要です。

できれば、1日1食は肉や魚の鉄とタンパク質を多く含む主菜を摂りたいですね

鉄分は、肉の場合は牛肉や豚肉、魚ならば赤身の魚や青魚などに多く含まれています。

忙しくて料理ができない時のために、鉄分とタンパク質を多く含むサバやイワシなどの缶詰があると便利です。

ビタミンでは、鉄の吸収を助けるビタミンCや、赤血球を作るときに必要なビタミンB12や葉酸などが大切です。

ほうれん草、アスパラガス、ブロッコリーなどの緑の濃い野菜や果物、納豆、チーズなどもこれらの栄養を含みますので、ぜひ食事に取り入れたいですね。

一度にたくさん食べられない場合は、間食にイチゴやミカンなどの果物を取り入れるのもよいでしょう。

高齢者の食事は量が少なくなりがちですが、栄養不足には十分気を付けましょう。

まとめ

今回は、高齢者の貧血の原因と、貧血を予防する食事の内容についての研究結果を紹介しました。

まとめると、以下のようになります。

  • 高齢者の貧血は、骨折や認知機能低下の危険性を高めるため、注意が必要!
  • 症状が目立たないので、日ごろから気を付けましょう。
  • 貧血を予防するためには、食事が大切。特に野菜、肉、魚などのおかずをしっかりと!
  • 食事を抜くと活動量が低下し、食欲がなくなる悪循環のもと。規則正しい食事を。

バランスのよい食事で、美味しく貧血予防を目指しましょう!

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