乳児用液体ミルクの販売が解禁!主な特徴と期待されるメリットについて | ヘルスケア110番~予防医学の専門家が教える健康管理プロジェクト

乳児用液体ミルクの販売が解禁!主な特徴と期待されるメリットについて

先日「乳児用液体ミルクの国内販売が解禁される」というニュースが流れました。

液体ミルクの販売、今夏にも解禁へ 育児負担軽減に期待

政府の発表によりますと、2018年の夏をめどに販売が解禁される方針とのことです。

みなさんご存知の通り、赤ちゃん用の「ミルク」といえば「粉ミルク」が普通ですよね。

「液体ミルク」については、海外からの個人輸入がほとんどです。

ではなぜ、これまでは国内での販売ができなかったのでしょうか。

今回は、そもそも「乳児用ミルク」とは何かと、そして「乳児用液体ミルク」についての説明をします。

乳児用ミルクとは?

そもそも、乳児用ミルクというのはどのようなものなのでしょうか。

乳児用ミルク(乳児用調製粉乳)は、法的には「特別用途食品」のひとつという位置づけです。

これは牛乳をベースにして、赤ちゃんの育児用に適するように栄養成分を調整したものを指しています。

考えてみれば当然ですが、母乳と牛乳には栄養成分に大きな差があります。

以下の表は、母乳(人乳)と粉ミルク(乳児用調製粉乳)、そして牛乳の栄養価の一部を抜粋し、比較したものです。

※日本食品標準成分表2015年版(七訂)をもとに筆者が計算

母乳や粉ミルクと牛乳の違いとしては、

  • タンパク質の量が異なる。(その分、母乳や粉ミルクは糖分が多い)
  • カルシウムの量が異なる。
  • 「油脂の質」とも言われる、脂肪酸のバランスが大きく異なる。

といったものがわかります。

日本において、乳児用に栄養成分を調整した「粉ミルク」が流通し始めたのは大正時代。

そのころはビタミンB1を添加したものでしたが、現在では、表にはないタンパク質の種類や、ビタミンやミネラルなどの成分なども、より母乳に近く調整された粉ミルクが広く流通しています。

なお、余談になりますが、市販の調製粉乳の中には「フォローアップミルク」と呼ばれるものがあります。

一見すると普通の「粉ミルク」のようですが、栄養成分や使い方は大きく異なりますので、注意しましょう。

「フォローアップ(不足の補助)」の名前の通り、フォローアップミルクは離乳食の時期に、不足しやすい栄養を補助するためのものです。

みなさんのイメージ通り、離乳食は、通常の食事よりもずっと柔らかく作られています。

そのため水分が多く、使用できる食材の種類や量に限りがあるため、ミネラルなどの栄養素が不足しがちです。

それを補助するための粉ミルクが「フォローアップミルク」というわけですね。

新生児から離乳食の間には、栄養バランスが異なるため適していません。

乳児用液体ミルクの特徴

さて、今回販売が解禁される「乳児用液体ミルク」とは、どのようなものなのでしょうか。

缶入り、パウチ入り、プラスチックボトル入りなどの種類が存在しますが、いずれも常温で保存ができ、そのまま赤ちゃんに飲ませることができる状態になっています。

プラスチックボトル入りですと、ふたの部分を付け替えることで、そのまま哺乳瓶として機能するのです。

国内では販売されていませんでしたが、欧米や韓国など海外では流通しているので、個人輸入や通信販売などで購入することができます。

ただ、輸入コストなどがあるために一般的に使用されることは、あまりありませんでした。

乳児用液体ミルクに大きな注目が集まったのは、2011年の東日本大震災と言われています。

被災地においては、きれいな水がなかなか調達できませんし、粉ミルクを溶かすためのお湯を温めることも難しい状態でした。

そこで、フィンランドからの緊急支援物資として紙パックの液体ミルクが届けられ、被災された方に重宝されたのです。

2016年の熊本地震の際にも、同じようにフィンランドからの支援物資として届けられています。

もちろん普段の育児でも、お湯を沸かすために赤ちゃんのそばを離れずにすみますし、火傷の危険もなく、手間もかかりませんよね。

今回の液体ミルクの販売解禁は、育児の負担を軽減したり、災害用の備蓄に利用したりする目的があるというわけです。

では、なぜこれまで販売できなかったのでしょうか?

これまで「解禁」と言っていましたが、実は液体ミルクについては法律で禁止されていたわけではありません。

「何も決められていなかった」のです。

乳児用食品は、厚生労働省と消費者庁がいろいろなことを決めています。

厚生労働省は、たとえば乳児に適した栄養バランスのことを決めたり、衛生面の基準を作ったりしています。

そして消費者庁では、その食品が「乳児用」と表示して販売していいかどうかの基準を決めています。

何も決まっていない状況では、消費者庁の基準では「乳児用」表示することができなかったのです。

つまり、乳児に合わせた栄養バランスの液体ミルクを作ることはできますが、それを「乳児用です」と言って売ることができなかったというわけですね。

【出典】規制改革ホットライン検討要請項目の現状と措置概要

今後、厚生労働省は乳児用液体ミルクに関して、メーカーに向けた衛生面などの基準を定め、省令改正に向けて動いていくとのことです。

それにあわせて、消費者庁も乳児用液体ミルクを「乳児の発育に適した特別用途食品」として表示・販売ができるようにしていく方針です。

粉ミルクと液体ミルクの違い

ここまで見ると、粉ミルクよりも液体ミルクの方が優れているようにも見えますが、実際は一長一短です。

粉ミルクと液体ミルクの違いについて知って、うまく使い分けましょう。

粉ミルクの利点

粉ミルクの利点は、なんといっても保管できる量の差です。

メーカーによって差はありますが、大缶(およそ800g入り)の場合、生後4~5か月の赤ちゃんであれば30食分程度に当たります。

液体ミルクの場合はボトルが30本必要になるところ、缶ひとつのスペースで保管できるのは、粉ミルクの一番大きなメリットです。

保管スペースだけではなく、買い物に出かけた時に一度に買って運ぶ量のことを考えても、粉ミルクは「大量に買いやすい」というメリットがあります。

液体ミルクは作る手間はかかりませんが、運ぶ手間や保管するスペースのことは考える必要があるでしょう。

なお粉ミルクの場合、メーカーによって差はありますが、開封後1か月は使用できるとされています。

しかし、粉ミルクでも液体ミルクでも、赤ちゃんの「飲み残し」については、細菌が繁殖しやすいので、すぐに破棄しましょう。

液体ミルクの利点

液体ミルクの利点は、大きくふたつあります。

とにかく手間がかからない

ひとつめは、とにかく手間がかからないこと。

粉ミルクの場合、消毒した哺乳瓶に粉ミルクを計って入れて、食中毒予防のために70℃以上のお湯で溶かし、さらに人肌程度まで冷ますという作業が必要です。

【出典】粉ミルクの作り方│和光堂 はいはい

近年では粉タイプだけではなく、計量しやすいキューブタイプのミルクもありますが、それでもお湯の温度管理は大変です。

その点、液体ミルクは消毒した哺乳瓶に入れるだけ。容器によってはそのまま哺乳瓶になるものもあります。

忙しい親御さんが多い現代において、この差はかなり大きいです。

水がなくても問題がない

ふたつめは、水がなくても問題がないこと。

前述したとおり、災害時にはきれいな水がなかなか手に入らないことがあります。

そんな時に液体ミルクが備蓄してあれば、安心して使うことができますね。

ただし、備蓄する場合にはある程度のスペースが必要なことには注意が必要です。

商品化されるのは、もう少し先

ニュースにもあった通り、厚生労働省は2018年の夏をめどに、乳児用液体ミルクに関する基準を定める方針です。

ただ、方針ができたからといって、すぐに商品がお店に並ぶとは限りません。

今後の乳児用液体ミルクについて、どうなっていくのかを整理してみます。

乳児用食品の基準

実は厚生労働省は、今回初めて乳児用液体ミルクについて検討しはじめたわけではありません。

2017年3月から、乳児用液体ミルクの販売解禁に向けた検討は進められていました。

日本乳業協会とも協力して液体ミルクの安全性について試験を続けていましたが、安全性が検証できると判断されたため、今回の発表に踏み切ったものと考えられます。

試験によれば、液体ミルクを120℃で4分間の加熱処理によって殺菌した後、常温で長期間保存しても細菌の存在は確認できないことと、栄養成分が残ることが確認されました。

賞味期限は、金属缶やレトルトパウチの場合は9か月から1年間、紙パックの場合は半年間を想定しているとのことです。

食品メーカーの動き

厚生労働省が基準を決めたら、各メーカーが液体ミルクの商品開発を始めることになります。

ということは、2018年の夏にいきなりお店で買えるようになるわけではなく、あくまで「準備ができた」という状態というわけです。

実際には、商品開発の時間として2年程度かかる見込みとされています。

これに関しては、少しでも早い商品化を期待したいところですね。各メーカーには頑張っていただきたい!

まとめ

今回は、話題の「乳児用液体ミルク」について説明しました。

まとめると、以下のようになります。

  • これまで「乳児用液体ミルク」は、基準が定められていなかったため、国内では「乳児用」としての販売ができない状態でした。
  • 2011年の関東大震災、また2016年の熊本地震の際、きれいな水が手に入らない状況で、フィンランドからの救援物資「乳児用液体ミルク」が重宝されました。
  • 2018年3月、厚生労働省が「乳児用液体ミルク」に関する基準を定め、販売解禁すると発表しました。
  • 2018年の夏をめどに基準が作られ、各メーカーの商品開発が始まる見込みです。
  • 液体ミルクには、手間が省けるという利点と、きれいな水がなくても大丈夫という利点があり、粉ミルクには、保管がしやすいという利点があります。

今回は液体ミルクについて話しましたが、管理栄養士としては、赤ちゃんの発育には母乳が一番という点はお伝えしたいところです。

とはいえ、必ずしもお母さんが赤ちゃんのそばにいるとも限りませんし、体調が悪い時や外出先でのサポートとしての乳児用ミルクは、とても大切なもの。

だからこそ、これまで長い間乳児用のミルクが研究し続けられてきたのですから。

液体ミルクの販売が解禁されても、粉ミルクと液体ミルクにはそれぞれのメリットがありますので、うまく使い分けられるようになるといいですね。

これをひとつのきっかけに、今後よりよい育児環境が整っていくことを願ってやみません。

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