高齢者に多い「口腔機能低下症」の主な症状とおすすめの口腔ケア方法 | ヘルスケア110番~予防医学の専門家が教える健康管理プロジェクト

高齢者に多い「口腔機能低下症」の主な症状とおすすめの口腔ケア方法

高齢者にとって、お口(口腔)のケアはとても大切です。

虫歯や歯周病などのトラブルがあると、食事の意欲が下がり、栄養状態の低下を招いてしまいます。

それだけではなく、痛みや不快感のために活動の意欲まで低下したり、上手く発音ができなくなると、コミュニケーションをとるのもおっくうになったり。

食欲や意欲の低下を予防するため、医療や介護の業界では、口腔のトラブルの予防や改善に日々努めています。

その中で注目なのが、2018年の4月から保険適用になった「口腔機能低下症」という症状です。

これは口腔に関するトラブルを、症状のレベルなどによって分類した中のひとつ。

比較的新しい分類なので、ぜひ知っておきたいところです。

今回は、この「口腔機能低下症」について説明します。

5つの口腔機能

お口の機能(口腔機能)は、大きく5つに分類されます。

これらの機能が綿密に組み合わさって「食べる」「話す」という活動につながっているのです。

加齢などの影響で、どれかひとつの機能がうまく動かなくなると、徐々に他の機能にも影響していくため、注意する必要があります。

以下の図は「5つの機能」と、それぞれが衰えた時に影響する口腔機能の低下を示したものです。

【出典】「口腔機能低下症」を診断しましょう | 日本老年歯科医学会

それぞれの機能を具体的にまとめると、以下のようになります。

  • 咀嚼(そしゃく):食べた物を「噛む」機能。
  • 嚥下(えんげ):食べ物や飲み物、唾液などを「飲み込む」機能。
  • 構音(こうおん):舌や唇を使って「言葉を作る」機能。
  • 唾液(だえき):食事や口腔内の清潔のために「唾液を分泌する」機能。
  • 感覚(かんかく):食事や発声のために、口腔内の状態を感じて理解する機能。

たとえば「咀嚼」の機能が低下する原因としては、虫歯や歯周病、また入れ歯が合わないといったものがあります。

そうすると、単に「咀嚼機能低下」だけではなく、食べ物をうまく噛めないまま飲み込むことになり、嚥下機能にも影響を与えるのです。

嚥下がうまくいかず、むせるのが心理的な負担になると、食欲が低下することもあるでしょう。

しかしこの場合、虫歯や歯周病の治療、入れ歯の調整によって改善すれば、食欲は元に戻る可能性が高いというわけですね。

口腔機能低下症とは

「口腔機能低下症」は、2016年に「日本老年歯科医学会」によって発表された言葉です。

健康な状態から、高齢者の食事で問題となる「咀嚼障害(噛む機能に問題がある状態)」や「嚥下障害(飲み込みに問題がある状態)」などの口腔機能障害へ至る段階のひとつとして定められています。

診断ができるように数値の基準が設けられているのが特徴で、歯科診療所の対応で進行を遅らせたり、改善させたりといった対応が望まれる段階です。

高齢化が進む今、お口の機能を保ち、トラブルを防ぐことは大切なこと。

そのため、2018年の4月から、この口腔機能低下症の診断や治療には保険が使えるようになりました。

【出典】「高齢期における口腔機能低下症」の概念と診断基準 ―学会見解論文―

「口腔機能低下症」には、図に示された7つの診断ポイントがあります。

このうちの3つ以上に当てはまる場合、口腔機能低下症と診断されます。

口腔不潔

お口の中の細菌の数を調べたり、舌苔(ぜったい)の量を確認したりして診断します。

口腔乾燥

唾液の分泌不足や口呼吸などで、お口が乾燥しているかどうかを調べます。

咬合力(こうごうりょく)低下

噛む力を測定する「デンタルプレスケール」を噛んで、力を測定します。

舌口唇運動機能低下

「パ」「タ」「カ」と5秒間発音し、口全体の動きが低下していないかを調べます。それぞれ1秒間に6回以上正確に発音できていれば問題ありません。

低舌圧

舌圧測定器を使って、舌の力を測定します。

咀嚼機能低下

専用のゼリーを噛むテストによって、咀嚼する力を測定します。

嚥下機能低下

日常生活や普段の食事に関する聞き取りによって、嚥下機能に問題がないかを調査します。

口腔機能が低下すると

口腔機能が低下すると

  • 最初は食べ物や飲み物を飲み込む際にむせる
  • 口の端からわずかに食べこぼしがある
  • 噛めない食べ物が増える
  • 滑舌が悪くなる

といった症状が出始めます。

この状態を「オーラルフレイル」と呼んでいます。「オーラル」とは「口腔の」、「フレイル」とは「衰える」の意味です。

はじめは気が付きにくい、わずかな変化しかありません。しかし、これが進行すると「口腔機能低下症」につながっていきます。

噛めないものが増えると、徐々に食べるものに偏りが出てきます。

また、食べこぼしやむせは、本人にとっても負担になりますので、食事に対する意欲が下がることも多いです。

そうなると、食事から十分な栄養を摂ることが難しくなり、全身の栄養状態が低下していく恐れがあります

栄養状態の低下によってオーラルフレイルは悪化しますし、全身の筋力が落ちますので、活動量も下がっていきます。

滑舌が悪くなることも相まって、他の人とのコミュニケーションもおっくうになり、さらに活動量が低下するという悪循環を招いてしまうのです。

介護予防の意味でも、口腔機能の維持はとても大切な課題と言えるでしょう。

オーラルフレイル時点では、適切なケアによって進行を止めることができると言われています。

定期的な歯科検診などで早期発見ができれば、治療や口腔ケアの指導によって、改善することができるのです。

高齢者の口腔ケア

口腔機能低下症に至る入口は、下の図に示されている「ポピュレーションアプローチ」とされる部分。

虫歯や歯周病などの口腔トラブルや、その前段階としての口腔ケアへの関心低下などがきっかけになって進行します。

【出典】「高齢期における口腔機能低下症」の概念と診断基準 ―学会見解論文―

では、これらを予防するために必要な高齢者の口腔ケアは、どのようなものがあるでしょうか。

口腔清掃

ひとつは、歯磨きやうがいなどの「口腔内をきれいにするケア」です。

お口の中に汚れがあると、虫歯や歯周病の原因になるだけではなく、ウイルスなども体内に侵入しやすくなります。

感染症の予防のためにも、口腔内は清潔に保ちたいですね。口腔清掃には、以下のようなものがあります。

  • うがい
  • 歯磨き
  • 義歯(入れ歯)の清掃
  • 粘膜や舌の清掃

口腔清掃の際は、その方に合った器具を使用することと、介助をする場合には意志の疎通をしっかりと行うことが大切です。

柔らかい粘膜で傷つきやすい口腔内は、非常にデリケートなもの。口腔ケアが苦痛になると、いくら大切なこととはいえ、嫌になってしまいます。

高齢者に向いた歯ブラシとしては、やわらかめのブラシ、またブラシの部分は2cm程度の幅がおすすめです。

持ち手部分は太めの方が握りやすく、まっすぐのものが使いやすいと言われています。

スポンジブラシや自助具を適宜利用して、負担にならない歯磨きを心がけましょう。

【出典】要介護高齢者の口腔ケア | e-ヘルスネット 情報提供

また、歯磨き剤は研磨剤が含まれていないものが適していると言われています。

特に義歯(入れ歯)のケアには、通常の歯磨き剤ではなく、専用のものを使いましょう。

要介護の方への口腔ケアの場合、以下の3つのポイントに注意が必要です。

口腔内をチェック

まずは、口腔内をチェックしましょう。口内炎や欠けた歯、歯ぐきの腫れ、傷などがないかを確認します。

口内炎や傷などの痛みは、言うまでもなくストレスのもとになります。ケアを拒否する原因にもなりますので、問題があるときには歯医者さんに相談するようにしましょう。

介助は最小限にする

介助者がすべてやってしまうのではなく、できるだけ本人の能力を活かせるように、軽い歯ブラシや自助具などを使うようにしましょう。

仕上げは介助者がサポートしましょう。

誤嚥(むせ)に注意

寝たきり状態の場合は、仰向けのままだとむせやすくなります。顔を横に向けて、下あごを引いた姿勢を取ってもらいましょう。枕を使うと姿勢を維持しやすくなります。

嚥下状態が悪い場合、水分は最小限にとどめて、綿棒や柔らかいタオルなどで水分をふき取りながらケアしましょう。

麻痺がある場合は、麻痺している側を上に、健常な側を下にして横になってもらいます。

口腔機能回復

もうひとつは、口腔機能の維持や回復を目的にした「運動や訓練のケア」です。

口腔清掃と合わせて行うことで、口腔機能の低下を予防しやすくなります。

口腔機能回復のケアには、以下のようなものがあります。

  • リラクゼーション
  • 口腔周囲のマッサージ・運動訓練
  • 咳払い・上手なむせの訓練
  • 嚥下の訓練
  • 発音・構音訓練

自宅でも簡単にできる体操には、以下のようなものがあります。

顔面体操

しっかり目を閉じて、唇を横に引いて頬を上げます。その後、口と目を思い切り開けてください。

もう一度口をしっかり閉じてから、頬を膨らませて、口を左右に動かします。

舌体操

口を開けて行うものと閉じて行うものがあります。

口を開けて、舌を思いっきり出したり引っ込めたり左右に動かし、口の周りをなめるように回します。上下に舌を動かす運動もよいでしょう。

口を閉じて行う舌体操は、舌で上・下唇を内側から押したり、頬を押したりします。

舌の働きがよくなって唾液も出やすくなり、発音がよくなります。

3、唾液腺マッサージ

頬の下と、あごの下をマッサージします。

【参考】健康高齢者の口腔ケア | e-ヘルスネット 情報提供

まとめ

今回は「口腔機能低下症」と、高齢者に大切な口腔ケアについて説明しました。

まとめると、以下のようになります。

  • 口腔機能には「咀嚼」「嚥下」「構音」「唾液」「感覚」の5つの機能があり、関わり合いながら「食べる」「話す」活動を行っています。
  • 「口腔機能低下症」は、健康な状態から口腔機能障害につながる途中に位置付けられています。
  • 口腔機能が低下すると、栄養状態の悪化から全身の筋力低下、活動の低下の悪循環になりやすいです。
  • 「口腔機能低下症」には7つの診断ポイントがあり、診断や治療には保険が使えます。
  • 口腔ケアは「口腔内清掃」と「口腔機能回復」の2種類を組み合わせるのが大切。

高齢者の健康のためには、口腔ケアは大切なポイントです。日頃の口腔ケアと、定期的な検診を心がけましょう!

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