受動喫煙の基礎知識。身体に及ぼす害と国で進められている禁煙対策

受動喫煙の基礎知識。身体に及ぼす害と国で進められている禁煙対策

受動喫煙の基礎知識。身体に及ぼす害と国で進められている禁煙対策

「受動喫煙」という言葉は、テレビのニュースなどで聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。

簡単に言えば「周りの人がタバコを吸っていると、自分が吸っていなくてもタバコの害を受けてしまう」というものです。

2020年に開催される東京オリンピック・パラリンピックに向けて、現在この受動喫煙を防止するための法改正が検討されています。

日本国内だけではなく、受動喫煙を防止しようという動きは世界的に高まっている状況です。

今回は、何かと話題になっている「受動喫煙」について、基礎知識と具体的な害、そして現在進められている対策について説明します。

受動喫煙とは喫煙者が吐き出した煙などを吸ってしまうこと

タバコを吸った時に、タバコの先から出る煙を「副流煙」といいます。この副流煙や、喫煙者が吐き出した煙などを吸ってしまうのが「受動喫煙」です。

通常の喫煙には発がんリスクがあることはよく知られていますが、同じように受動喫煙にも発がんリスクがあると言われています。

WHOによれば、職場の受動喫煙によって年間およそ20万人の労働者が亡くなっていると発表されているのです。

そのため予防医学の観点からも、受動喫煙を防止する動きが世界で広がっています。

受動喫煙による健康被害には、以下のようなものがあります。

  • 肺がん
  • 虚血性心疾患
  • 血圧上昇
  • 気管支喘息
  • 慢性気管支炎など

また、子どもの受動喫煙の健康被害には、以下のようなものが挙げられています。

  • 乳幼児突然死症候群(SIDS)
  • 呼吸器症状(せき、たん、息切れなど)
  • 気管支炎
  • 肺炎
  • 中耳炎など

喫煙場所による影響

タバコを吸う場合、ベランダに出たり、換気扇の下で吸ったりするという方もいらっしゃいます。

しかし、換気扇で吸い切れなかった細かい粒子が部屋に拡散したり、ベランダの窓の開け閉めの際に粒子が部屋に入りこんだりと、煙をシャットアウトするのは難しいものです。

また、受動喫煙にはタバコから出る煙だけではなく、服や髪などに付くにおい成分などの細かい粒子も影響しています。

タバコを吸って戻ってきた方は、タバコのにおいがしていることがありますよね。実は、その成分も受動喫煙のリスクのひとつなのです。

以下のグラフは、喫煙場所別の「子どもの受動喫煙レベル」を比較したものです。

タバコを吸う方がいない家庭を「1」とした時、外でタバコを吸う場合と、換気扇の下で吸う場合のレベルを比べています。

【出典】受動喫煙が子どもに及ぼす健康被害 – すぐ禁煙.jp(ファイザー)

分煙を行っている飲食店では、ドアで仕切った「喫煙室」を作ったり、出入り口にエアカーテンを設置したりしています。

もちろん、分煙は大切なことです。しかし、それでも完全に煙を遮断することは難しく、やはりリスクはあります。

スタッフの方やお客さんの出入りがあれば煙は漏れますし、体に付いた煙の成分をすべて取り払うことはできません。

私自身も飲食店でアルバイトをしていた経験がありますが、スタッフの方は服や体に煙が付いた状態でお店の中を歩くため、分煙で煙の拡散を100%防ぐことは現実的ではないでしょう。

加熱式タバコの場合

近年人気の「加熱式タバコ」。

タバコの葉を電気で加熱して蒸気を発生させ、ニコチンなどの成分を吸い込むため、周囲に煙が拡散しないというものです。

ただしこれも、タバコを吸っている方の呼気には有害物質が含まれています。

また日本禁煙学会によれば、依存性があることや発がん性物質が含まれていることが指摘されているのです。

新しい商品ということもあり、健康にどの程度影響を与えるか、安全性はどうかなどの評価は、まだまだこれからの部分が多く残っています。

受動喫煙防止のために「健康増進法」が改正

受動喫煙を防止するため、現在「健康増進法」の改正が検討されており、2018年6月8日にこの健康増進法の改正について審議入りしました。

現在も、健康増進法の第25条には「受動喫煙」に関する項目があります。

健康増進法(平成14年法律第103号) 第五章 第2節 受動喫煙の防止

第25条 学校、体育館、病院、劇場、観覧場、集会場、展示場、百貨店、事務所、官公庁施設、飲食店その他の多数の者が利用する施設を管理する者は、これらを利用する者について、受動喫煙(室内又はこれに準ずる環境において、他人のたばこの煙を吸わされることをいう。)を防止するために必要な措置を講ずるように努めなければならない。

【引用】健康増進法第25条と厚生労働省健康局長通知|とうきょう健康ステーション

しかし、現行の健康増進法には罰則がありませんので、あくまで「努力義務」となっています。

受動喫煙を防止するための対策を講じる必要はあるものの、実現が難しい場合でも特にペナルティがないということです。

今回の改正では、受動喫煙の防止が「罰則付きの義務」になるという点が注目されています。

東京都独自の条例について

2020年にオリンピック・パラリンピックの会場となる東京では、独自に「東京都受動喫煙防止条例(仮称)」を作る動きがあります。

この条例の特徴は、受動喫煙を避けにくい飲食店などのスタッフや、健康被害が大きい子どもを受動喫煙から守るという点です。

そのため、スタッフを雇っている飲食店は原則禁煙、幼稚園や保育園などの敷地内禁煙、また喫煙エリアへの子どもの立ち入り禁止などが定められています。

この条件に当てはまる飲食店は全体のおよそ84%程度と見られており、違反して改善命令に従わない場合には、罰則もある見通しです。

【出典】東京都受動喫煙防止条例(仮称)骨子案について|東京都

なお、東京都の受動喫煙防止条例は2020年の東京オリンピック・パラリンピックの開催前には、罰則も含めて全面的に適用する目標とされています。

禁煙となっている外食チェーンの例

受動喫煙防止の動きを受けて、大手の外食チェーンを中心に、店舗内禁煙の動きが広がっています。

すでに禁煙になっている外食チェーン、また今後禁煙にする予定を発表している例を紹介します。

すでに禁煙化している外食チェーン

すでに禁煙にっている外食チェーンの有名なお店は

  • スターバックス・カフェ
  • ロイヤルホスト
  • マクドナルド
  • ケンタッキー・フライド・チキン

この4つはすでに禁煙化をしています。

スターバックス・カフェ

店舗内は禁煙になっています。「コーヒーの香りを楽しむために」という方針のもと、禁煙にしているとのことです。

ただし一部、屋外では喫煙できる店舗もあります。

【出典】店舗の外の席では、たばこが吸えますか?|スターバックス コーヒー ジャパン

ロイヤルホスト

大手ファミリーレストランチェーンの先駆けとして、2013年11月より全店で禁煙となっています。

社長の店舗視察で「タバコの煙が充満している空間は、スタッフにとっても好ましくない」と、トップダウンで行われた方針とのことです。

ただし、客席とは独立して喫煙ルームが設置してある店舗もあります。

マクドナルド

2014年8月より、全店で禁煙となっています。

禁煙にした理由としては、子ども連れのお客さんへの配慮だけではなく、店内で働くスタッフの健康のため、という理由も挙げられていました。

国内全店舗の禁煙化は、マクドナルドで働く従業員の労働環境の向上にも繋がっていくと考えております。ご来店いただくお客様にサービスを提供する従業員の健康などに配慮することも、マクドナルドの大切な役割のひとつです。

【出典】マクドナルド公式サイト

ケンタッキー・フライド・チキン

2018年3月より、全店で禁煙となっています。

串カツ田中

2018年6月より、立ち飲み店の3店舗を除いて「全席禁煙」または「フロア分煙」となりました。

【出典】禁煙のお知らせ|串カツ田中

今後禁煙化を進めていく外食チェーン

今はまだ、禁煙化ではないけど、移行する予定でいるのが

  • サイゼリヤ
  • ココス
  • モスバーガー

この3つは全店禁煙化を目指しています。

サイゼリヤ

2019年9月までに全店禁煙を目標にしているとのことです。

2017年10月に行われた会見では、現在改正が検討されている健康増進法によって規制が厳しくなると、高校生のアルバイトを雇うことが難しくなるため、という理由も挙げられました。

ココス

現在は一部喫煙できる店舗がありますが、2019年9月より全店禁煙にすると発表がありました。

こちらも、子ども連れのお客さんへの配慮だけではなく、受動喫煙防止のためという理由が挙げられています。

【出典】ココス全席禁煙のお知らせ

モスバーガー

現在は「禁煙」と「分煙」の店舗がありますが、2020年3月を目標に全店禁煙にすると発表がありました。

効率的な禁煙方法

今後は、ますます「禁煙化」が進んでいくものと考えられます。

「そろそろ禁煙を考えた方がいいかも……」と思った方のために、具体的な方法を紹介します。

喫煙の習慣は「ニコチン依存症」であることが多いです。

タバコから摂取するニコチンが脳に達すると、ドーパミンという快楽物質が放出されます。

そのため、血中のニコチン濃度が下がるとまたニコチンが欲しくなり、タバコを吸うというサイクルになるのです。

ニコチン依存症の場合、自分の意思でタバコを辞めるのは難しいと言われています。

そういった場合は「禁煙補助薬」を使うのも、ひとつの方法です。

ニコチン製剤は体と脳を慣らしていく

ニコチンを含むガムを噛む、またはニコチンパッチを皮膚に貼ることで、血中のニコチン濃度を安定させます。

ニコチン濃度が安定して下がらなければ、タバコが欲しいという欲求が起きにくくなるのです。

あとは、徐々にニコチンの量を減らして、体と脳を慣らしていくというのがニコチン製剤の仕組みです。

バレニクリン(チャンピックス)はニコチンの邪魔をする

ニコチンを含まない薬としては「バレニクリン」という成分を含んだ内服薬(商品名「チャンピックス」)があります。

これは脳でニコチンと結合してドーパミンを放出する「ニコチン受容体」に結合する性質を持つ成分です。

内服すると、ニコチンより先にバレニクリンが結合し、ニコチンの邪魔をするという仕組みになっています。

こうなると、タバコを吸ってもドーパミンが出ないため、タバコを「おいしい」と感じなくなるのです。

禁煙外来の活用もおすすめ

病院によっては、医師による禁煙指導を行う「禁煙外来」を受け付けているところがあります。

ニコチン依存症かどうかを調べて、その方に適した禁煙薬の処方や、タバコが吸痛くなった時のアドバイスなどを行います。

禁煙治療に健康保険等が適用できることもあり、その場合は自己負担も軽くなります。

以前私が働いていた病院では、スタッフの調理師さんが禁煙外来でタバコをやめられたことがありました。

一度相談してみるのも、よいかもしれません。

まとめ

今回は「受動喫煙」の基礎知識と、タバコに関する社会の動きについて説明しました。

まとめると、以下のようになります。

ポイント
  • 受動喫煙の防止は世界的な動きになっていますので、今後タバコに対する規制は強くなっていくものと考えられます。
  • 国内では、東京オリンピック・パラリンピックが開催される2020年が、ひとつの大きな区切りになるでしょう。
  • タバコに対するスタンスは人それぞれではありますが、禁煙をする場合には、禁煙外来でアドバイスをもらいながら行うというのもよいでしょう。

まずは今回の法改正がどうなるか、今後も要注目ですね。

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